飢餓海峡 | 桜さんの映画鑑賞日記

飢餓海峡

飢餓海峡 1965 日本


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監督: 内田吐夢
製作: 大川博
企画: 辻野公博
吉野誠一
矢部恒
原作: 水上勉
脚本: 鈴木尚也
撮影: 仲沢半次郎
美術: 森幹男
編集: 長沢嘉樹
音楽: 富田勲
助監督: 山内柏
太田浩児
福湯通夫
高桑信
 
出演: 三國連太郎 犬飼多吉/樽見京一郎
風見章子 妻敏子
左幸子 杉戸八重
加藤嘉 父長左衛門
伴淳三郎 弓坂吉太郎
進藤幸 妻織江
加藤忠 刈田治助
岡野耕作 戸波刑事
菅原正 佐藤刑事
志摩栄 岩内署長
外山高士 田島清之助
河合絃司 単本虎次郎
最上逸馬 沼田八郎
安藤三男 木島忠吉
曽根秀介 朝日館主人
牧野内とみ子 朝日館女中
北山達也 札幌の警部補
山本麟一 和尚
大久保正信 漁師辰次
矢野昭 下北の漁師
西村淳二 下北の巡査
遠藤慎子 巫子
田村錦人 大湊の巡査
沢彰謙 来間未吉
安城百合子 葛城時子
荒木玉枝 富貴屋のおかみ
河村久子 煙草屋のおかみ
亀石征一郎 小川
須賀良 鉄
八名信夫 町田
久保一 池袋の警官
北峰有二 警視庁の係官
三井弘次 本島進市
沢村貞子 妙子
高須準之助 竹中誠一
藤田進 荻村利吉
鈴木昭夫 唐木刑事
関山耕司 堀口刑事
斎藤三男 嘱託医
高倉健 味村時雄

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ブルーリボン賞

脚本賞 鈴木尚也



★★★★★★★★☆☆

船 古い有名な邦画も見ておかないといけません。

私はもともと邦画は苦手なんですが古いよいものは面白いです。

俳優もいいし昔のほうが作品への意欲が伝わってきます。

特に好きなのがこういったサスペンス系です。

今回は有名なのに初めて見る俳優さんも多かった。

三国連太郎氏などは佐藤浩一の父ということしか知らなかったので・・

伴淳三郎に左幸子・・初めて見ました(苦笑)

高倉健が若すぎてなのか雄弁な役が合ってなかったのかイマイチでしたが・・


まず昔の邦画がいいと一番に思えるのがオープニングが渋いことですね。

白黒ということもあるのですがやっぱり白黒は目新しい。

これ、白黒で育ってたらまたカラーの洋画のほうがいいと思うのかも。

最近特に白黒のほうがきれいだと思うのです。

女性の肌の白さや景色の陰影、荒れ狂う海などがその例。

色を抑えることが最近の洋画の流行となっていますが、

銀残しといわれる青黒いされた色使いやざらついた演出も回帰してるのかな。

蟻地獄のような世界からあがこうとする哀しい社会派映画としての出来は、

話の内容はまた違うけれども「天国と地獄」のほうが好きです。

そして時代や歴史のどうしょうもない狭間で忘れようとしても追ってくる過去、

よく出来た叙情サスペンスの惨さは「砂の器」のほうが優秀。

これらと比べてしまうのはどこか似ていたからか。

ただし娯楽性という点ではこの作品が一番ですし、

女性のひたむきな情念がひしひしと味わえます。

どこか「SAYURI」という洋画も思い出しました。


しかしこの作品、

邦画なのに邦画っぽく感じないのはなぜなんだろう?

色恋や親子の愛や過疎地域の描写などもちろん日本そのまんまなのですが、

撮り方がもう外国の映画を見ているような感じでした。

筋はわかりやすく犯人が最初からわかっており、

刑事たちがその事件を追うことを観客は眺めているだけ。

列車に乗る犯人の撮り方は「インディジョーンズ」などの冒険映画、

東京駅をクレーンで撮るロングショットはあらゆる洋画でいつも使われている。

時折挿入されるネガポジ反転するソラリゼーションという技法、

これなんか有名すぎる技法ですよね。

カラーになった今でもホラーやサスペンスなどの映画では頻繁に使われてる。

そして犯人三国と再会するも知らないと言われる左、

あることがきっかけでやはりその人だと確信する瞬間、

(犬飼さんだ!)と彼女のズームアップされる顔とスローに「JAWS」の署長のショットを思い出した(爆)


日本映画・・それも1965年の・・白黒作品に、

こんなにたくさんの今では当たり前の演出があったなんて。


犯人三国連太郎は最初から犯人ですが、

いよいよ捕まった後果たして本当に真の犯人だったのか?

「本当のことをお話しましょう」

もう後半の後半にオープニングで起こった事件の真相が明らかになります。

悪いところも飛ばすところもなにもない良作です。

俳優も豪華だしどこか松本清張ものを彷彿とさせます。

決め手となる左幸子の父の「しらんなぁ・・だが」このいつも「知らない」と言う名言の、

加藤嘉にはまさに砂の器だなぁとニヤリ(苦笑)

この時代おそらくは日本は落ちるところまで落ち、

そこから誰もが這い上がれる自由をも持っている。

それが悪くてもよくても関係ないであろうくらいの勢いがあった。