天城越え | 桜さんの映画鑑賞日記

天城越え

天城越え 1983 日本


¥3,420


天城越え


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監督: 三村晴彦
製作: 野村芳太郎
宮島秀司
原作: 松本清張 『天城越え』
脚本: 三村晴彦
加藤泰
撮影: 羽方義昌
美術: 横山豊
編集: 鶴田益一
音楽: 菅野光亮
助監督: 花輪金一
 
出演: 渡瀬恒彦 田島松之丞
田中裕子 大塚ハナ
平幹二朗 小野寺建造
伊藤洋一 小野寺建造・中学時代
吉行和子 建造の母
金子研三 大男の土工
小倉一郎 建造の叔父
石橋蓮司 土谷良作
樹木希林 その女房
坂上二郎 旅の菓子屋
柄本明 旅の呉服屋
北林谷栄 茶店の婆さん
佐藤允 江藤署長
山谷初男 山田警部補
伊藤克信 赤池巡査
車だん吉 黒田運転手
榎本ちえ子 女子事務員
中野誠也 県警の広報係長
加藤剛 国立病院の医師


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 14歳の少年と娼婦が天城峠を旅しているとき起きた殺人事件と、30年間、事件を追い続けた老刑事の姿を描く。
家が嫌になり静岡の兄を訪ねるため、ひとり天城越えの旅に出た少年。途中、素足で旅するハナという女性と出会い、二人並んで歩く。
しかし、道中、旅の資金を手に入れるために行きずりの男に声をかけるハナ。
無理やり少年と別れたハナの後を、密かに追った少年は草陰で情交を重ねる二人の姿を目撃してしまう……。

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ブルーリボン賞
主演女優賞 田中裕子


★★★★★★★☆☆☆
汗この作品は前から気に入っていて、
松本清張シリーズでは、「砂の器」「鬼畜」とともに、
私のお気に入り3部作です。
どれも号泣した覚えがあります(恥)
パターンはおんなじなんですけどね・・
誰かをかばうために嘘をつくかシラをきるパターン(おくゆかしくて好き)
何度鑑賞してもおんなじところで感動しちゃう・・

内容の細かなところも忘れかけてるのに、
おんなじ場面が近づくとひしひしと思い出す。
スピルバーグ映画のようなんです。
ある意味あざといんだけれど・・
清張映画の叙情編
とにかく回想シーンが絵で魅せて言葉の説明が少ない。
わかりづらい人もいるかもしれないけれど、
わかる人には心の琴線に触れてしまう・・
それが今回は初恋という、
サスペンスの中に純愛を取り入れた秀作になっています。


少年の初恋。
それは共感できるのです。
男とか女とか区別せずに大人の前の年に、
もちろん殺人事件や女郎への憧れなどはないけれど、
ものすごくわかる場面があるのです。
くどすぎる描き方かもしれない。
けれども後半のあるシーンそれまで重ねられていた、
原稿用紙の映像化が映画となって押し寄せてくる・・
(イル・ポスティーノとかもこのパターンなんだよなぁ・・)

主人公は老刑事の訪問を受けある原稿を印刷する出版社の社長。
その刷り起こされた文字が最初にテロップとして流れる・・
「天城越え」うまい!
その原稿は主人公の回想となり幼少時に重なってゆく・・
説明は映像で現されセリフはない。
生涯独身で通した彼の机の上には母親の写真。
幼少時の彼の生い立ちは天城峠に繋がってゆく・・


そこで出会った女郎にはどこか母親の面影もある。
若かりし日の刑事もある事件で重なりそこではたと気づく。
これは純愛映画でもありサスペンスでもあるけれど、
このころの時代背景をも描ききっていると。
異なるものへのきめつけと罪悪。
男尊女卑。
時代が現在と交差してまた気づく。
天城峠を走り抜けるオートバイ・・
エンディングのなんともいえない余韻。
ただのサスペンスがらみの純愛映画ではない。
主人公の余命がどれだけなのかも説明されない。
全ては回想シーンと現在のシーンだけしかない。


何度もオーバーラップする田中裕子の菩薩のような笑顔と、
その雨に濡れる顔に許しを得てもどうにもならなかった少年の涙・・
この作品は10代の終わりの男の子または、
その時代を遠く懐かしむ中年層に受けそうな純文学ですね。
でも私はなぜか少年や男の人の目で描かれている作品は見られるのです。
あまりどろどろしていないところがよいのかも・・
中性的に見られるのが共感できるみたい(爆)
どうしても女性主役の不倫ものや少女の恋愛ものはひいてしまう。
男の人の純愛のほうがキラキラしてるのかもね・・
(あすなろ白書や東京ラブストーリーが好きなのでした)